【2021-06-15 更新】本記事の内容は時代遅れです。 Meetは既にBreakoutの機能を持っていますので、 そちらを使いましょう。 「Meet ブレイクアウトルーム」で検索すると 現状で最適な方法が得られます。

大学での英語の授業もオンラインということなのですが、 こんな状況であってもグループワークを実現して アウトプットの機会を確保したいという動機があります。 こうしたグループワークは Zoom を使っていれば Breakout Session で実現可能ですが、 Meetには現状そのような機能はありません。

しかしながら、 すでに有志の方がMeetでも擬似的にBreakoutする方法を共有してくれているので、 まずは2つの事例を紹介したいと思います。 その次に、擬似Breakoutを試した際に発生した問題と、 それらの対策を対応させて残しておこうと思います。

なお、これを書くにあたっては初回のチュートリアルで 学生の皆様にご協力いただきました。 授業が終わった後も問題の解決に協力してくださる方や、 膝を打つような解決策を提供してくださった方もいらっしゃり、 何らかの形で共有したいと思った次第です。

Google Meet と Breakout Session

擬似Breakout自体は色々とすでに説明されています。 日本語ではこの動画がわかりやすいです。

ただ聖徳太子じゃないので複数の部屋で同時に会話されると辛いです。 全くついていけません。 そういうタブを複数作成した時の問題点は以下の動画で タブをミュートにする というシンプルな解決策があります。 (ただ、この手法はせいぜい5部屋くらいしか作れず、 ペアワークなどはしんどい気がします。)

以上の動画を見ればMeetと擬似Breakoutの大枠は理解できると思います。 またアクティブラーニングの意義などに関しては 吉田先生、栗田先生の動画をご参照ください。 もちろん銀の弾丸ではないのですが、 有効な場合も多くあります。 (余談ですが、 受けられる人はFFPとかを履修すれば 更に分かりやすいのはおすすめです。)

次に Breakout で発生しうる/した問題を概要と対策のペアで紹介します。 あと毎回「擬似」をつけるのは冗長なので、 以後は Breakout とします。

Breakout で発生した問題

部屋をミュートした状態での連絡

概要

上で2つ目に紹介した動画で Mute Tab というプラグインが導入されていますが、 グループをミュートすると学生との連絡が困難になります。 これは学生→教員の連絡が困難になる問題です。 また、教員の声を各部屋でミュートにすると、 連絡の際にいちいちミュートを解除しないとなりません。 これは教員→学生の音量管理が困難になる場合です。

対策

基本的に、常に教員の音声はオフにしておきます。 つまり、ミュートにしておきます。 もし部屋で質問が出た場合、 その部屋のみのミュートを解除して口頭で指示を出します。 そして部屋を出る際はミュートをオンにして、 全体の部屋に帰ります。 これで教員→学生のパスは保証できます。

逆に学生→教員のパスは 全体Meetのチャットに代表の人がコメントする仕組みを導入する ことで解決します。 詳しくは後ほど述べます。

Breakout部屋のurlを踏んでもログインできない

概要

個人的な感覚だと最も厄介な問題がこれでした。 最初に点呼する部屋は全員が入れているのに対し、 Breakout時に利用した lookupを含むURL だと うまくログインできない問題が続出しました。 このlookupを含むURLが曲者で、 ハイパーリンクのような役割を持っていて 実際のリンクとは異なります。 したがって、見た目は同じなのに実際は違う部屋に飛んでしまったり、 そもそも入れない、のような問題が発生します。

対策

ちょっと目視ではわかりづらいのは確かなのですが、 ハイパーリンクを使わず、 実際のURL(無意味なアルファベット)のリンクを貼る という対策が最も効率的でした。 実際、この方法をとった最後のクラスは一発で全員が入れました。

また、上の方法を使えば 権限がない学生はURLを踏んだ段階で 権限を申請せざるを得ないので、 そこで権限の申請が来た学生は 学外のアカウントを使っていることがわかります。 いわゆる Fail Safe なシステムですね。

なお、これは当の学生さんが 授業後にも残って解決を手伝ってくれたので 非常に助かりました。

グループワークの終了を教員が把握できない

概要

これは始めてから発覚した問題です。 例えば「これをグループでやってくれ」 と課題を出すのはいいのですが、 そのグループが終わったタイミングがわからない、 という根本的な問題がありました。 当初は各グループチャットに 終わった旨を書くように指示したのですが、 それもグループを見回るの時間がかかり、 かなり忙しく動くことに…。

対策

これは学生側からの提案だったのですが、 全体Meetのチャットに代表の人がコメントする仕組みを導入する ようにすれば、どこのグループが終わったのかが よりスムーズに教員がチェックできます。 その代表の人は最後に話した人でもいいですし、 議長のような役割を事前に決めておくのもよいでしょう。 僕は事前に決めてしまうのが良いかな、と考えています。 この問題は役割分担問題として後で述べます。

このアイデア、言われてみれば当然なのですが、 少なくとも僕は気づきませんでした。 授業を改善するためのアイデアを共有してくれる 学生の視点の高さに感心してました。

グループワークの目的、内容が不明瞭

概要

これはあくまでも今後起きそうだな、 という類の問題です。 グループワークにおける 目的やトークテーマ、問が曖昧だと、 せっかくグループを作っても 「え、で結局なにを話せばいいの、 そもそもなんで取り組むの」 となります。

対策

上の疑問を逆にとれば、 先に 1. グループワークの理由2. 具体的な活動内容 を明示的に与えてあげれば良さそうです。 試しに、グループワークの目的と具体的な活動内容をペアでまとめていきます。 なお、目的には動機付や練習、復習などがあり、 活動内容には Think Pair Share や Peer Instruction などがあります。

まず対象を学ぶ意義を実感するために 「動機付」を目的とする場合を考えます。 問いのはじめは「なんでXなんて練習せにゃならんのでしょうね」 というものになります。 そして「もしXがなかったらどうなるんでしょう」 という風につなげます。 これだとまだ問いがふわふわしていて答えもオープンです。

例として「語順」なんかをあげてみます。 なんで英語の語順なんかを気にせにゃならんのでしょう。 もし語順がなかったらどうなるんですかね。 ちょっと試しに “The dog bit the man.” とか “The woman called the dog John.” とかの語順を ぐちゃぐちゃにしてみて、意味をグループで考えてみましょう、 のようなタスクにすると、タスクは和訳という形で明確になります。

「男が犬に噛み付いた」とか「女性はJohnを犬と呼んだ」なんて、 割とツッコミどころ多くて僕は好きです。 いやそれはあかんでしょ、だからそう言うやばいミスをしないように しっかりみていきましょうね、と動機付が達成できるわけです。 つまり 「どうなるんでしょう」じゃ問いがオープンすぎるので、 もっと身近で具体的なタスク(翻訳など)どに変えてあげる、 という対策が可能です。

今のような動機付には Think Pair Share が使えますが、 他にも英単語の学習や訓練には Quiz-Quiz-Trade、 英文読解には Jigsaw、 あと復習には Peer Instruction などの活動ができそうなので、 目的と活動を丁寧に説明し、 明確に紐づけてあげたいところではあります。

役割分担問題

誰から始めるかとか、 意見をいう順番をどうするかとか、 先ほどの座長を誰にするかとかは グループワーク全般の問題です。 こうした問題の根本には、 人の役割や責任の振り方が一意に定まらない、 という原因があります。 野球でいうお見合いとか、 「どうぞどうぞ」ってやつですね。

対策

僕は毎回のクラスでグループ分けをランダムで行います。 そのランダムで決めた「グループワケーシート」の中で、 順番や座長を明示的に振ってあげるのが 効果的に思います。 ちゃんと前の人が次の人にバトンを渡せばいつ始めていいかが明らかですし、 座長にグループの確認をさせれば 人がそろっているかとか、いつ終わったかとかが教員も把握できます。

なお、座長に優先度をつけておくと、 かりに座長1がいなくても座長2が対応、 ということができるので、 優先度付き座長を任命します。 ランダムに振ったとき、上から優先権を与えていく、 というほうがイメージつきやすいです。

Meetから落ちるとサポートを受けられなくなる

概要

授業の開始時にMeetにログインしてね、 という方式だと説明している途中で Meetから落ちた生徒がいた場合にサポートできません。 そのため、Google ClassroomのようなLMSを導入できている場合、 そのホーム画面にいくつかの対処法を書いておく必要が有ります。

対策

あまりサポートの幅を広げるとこちらがチェックする範囲も増えてしまうので、 僕はFormsで質問フォームを授業のホーム画面に置いてあります。 これがあると、途中で抜けた生徒も Forms経由でサポートを求められるので 途中で落ちた生徒もカバーできます。

全員が話す・環境音のレベルが高いと聞き取りづらい

概要

グループで同時に話してしまうと誰の声かわかりづらかったり、 そもそも環境音が大きいと聞き取りづらい、 というコメントがありました。 その通りだと思います。

対策

これは話す人以外はなるべくマイクをオフにする、 という対策が可能です。 ただ、そうすると割り込んでのコメントが 難しい、という問題点もあります。 おそらく、話して側が聞き手に 「何かコメント・ツッコミはありますか」 というキューを出してあげることも、 同時に必要かと感じました。 あまりにも環境音のレベルが高い人はチャットで参加などが必要かもしれません。

そもそもグループワーク必要?問題

概要

最初にアウトプットの機会を担保したい、 という話をしたのですが、 部分的にグループワークは不要だ、 みたいな話も当然あります。 例えば、やろうとしてみて 「やっぱいらないか」となったのですが、 単語チェックくらいなら個人でやれば済む話なので、 わざわざグループワークにする必要もなさそうです。 逆に、英語で自己紹介の練習をするとか、 発音のチェックをする、とかはグループでないと難しいです。

対策

座学でないと学べないこと…というのもあるはずだが、 経験的には手を動かすほうが深い理解には繋がる。 つまり、知識を座学の状態から タスクに落とし込めていない、というのが問題。

グループワークの目的は吟味する。 あれ、やっぱり目的がまだまだ曖昧ってことですね。 作るのも大事だし聞き取るのも大事、 みたいな類はQuiz-Quiz-Tradeが有効。 例えば、英語の数字なんか、 自分で問題を作って共有する、 ってのは非常に効果的。 そうのがいい。一方、 知識系はどうしようもない。 その知識をどう運用に持っていくか、 がこの授業のキモなわけで。

グループワークの様子を録画できない

概要

録画しているのは全体の部屋だけであり、 グループワークのために分割した部屋の録画は 現実的ではありません。 というのも、6部屋あったら 6部屋分の録画を作成することになり、 容量的にもデータの管理という意味でも 作業が煩雑になるからです。

対策

解決策の一つは 座長らとサンプルのグループワークを実施する、 というものです。 座長は感覚がつかめる。 またワークの欠陥もそこでつかめるので、 対策を練りこんだ状態で全員と共有できる。

毎回部屋を変える必要ある? 問題

概要

人によっては毎回変わることに抵抗があり、 また毎回自己紹介をするというのも、 なんだか冗長な気もします。 また、次も同じグループと考えれば その場しのぎのコミュニケーションは 行われないように思えます。

対策

最低2,3回は同じグループを維持する、 というルールを試験的に導入してみます。 そうすると、グループ作成の手間を 1/2にできますし、また 特定の人に依存する問題と 解決策も引き継げます。

他の教員のアカウントと衝突する問題

概要

グループ分けしたりする際、 他のアカウントに切り替わってしまう、 という問題があります。 録画の権限がなぜか向こうに移ってしまっていて面倒です。

対策

終始プライベートモードで実施すれば解決します。 若干、プラグインなどが面倒ですがやむなしですね。

Meet自体で発生したした問題、解決方法

  • Meetから追い出される
    • 概要: モバイルルーターなどを使っている場合に発生します。 僕もZoomでゼミに参加した際、通信速度のせいで 落ちたことがあります。
    • 対策: より良い通信速度を得られれば解決します。 しかしながら、学生にとって困難な場合もあります。 そのような場合は 主催者側ができるだけ カメラをオフにしてスライドのみの共有にする、 などの工夫が必要になります。
  • 相手を見れないから話の切り出し方が難しい
    • 概要: 普段のミーティングと全く同じ問題ですね。
    • 対策: グループに仕切り役を一人作ります。
  • レスがないと不安になる
    • 概要: わかる。
    • 対策: あくまでも試験的ですが、 {b: 同意}、{ノ: 挙手} というルールを作ってみます。
  • Tab Mute プラグインを導入できない
    • 概要: 大学のPCに拡張機能を入れられるとは限らない。
    • 対策: 事前の確認が必要です。 なお、ストアからは導入できました。
  • グループの人数が揃わない
    • 概要: いちいち確認しに行くのは効率がわるいです。
    • 対策: 座長に報告してもらう。めっちゃ便利。
  • 音声周り
    • 概要: マイクが使えない、音声が聞こえなくなる
    • 対策: とりあえずはチャットで対策

まとめ

  • グループのメンバーに優先権を与えて一番上の人をファシリテーター(座長)にする
    • 人数の確認から全体チャットへの報告、意見の共有などなど、
  • 実際にグループワークのサンプルを行うまた、これは自戒としてなのですが、
  • 人数があまりにも合わない
    • 教員が参加する グループワークの目的と方法は明確にしようと思いました。

まだまだ問題は出てきそうなので、 その都度更新していきます…